アートセラピーとは

アートセラピー、またはクリエィティブ・アーツ・セラピーは、心理療法の一形態であり、絵画、彫刻、音楽、ダンス、演劇などの芸術的な表現を通じて心の健康を促進する手法です。主に欧米の精神医療で研究され、心理的な病気やさまざまな障害を持つ人々の治療に利用されています。また、健康な人々が自己成長やストレス管理、感情の表現、自己理解を促進するためにも役立ちます。

クエストでは、アートセラピーに関する2つの講座が提供されています。

【セラピストを目指す方のために】

クエスト・アートセラピスト養成講座
この講座では、アートセラピーの基本的な理論や手法について学び、それを生活や仕事に応用する方法を習得します。受講者はアートセラピストとしてのスキルを磨き、資格を取得することを目指します。

【アートセラピーを学びたい方のために】

心をケアするアートセラピー講座
この講座では、アートセラピーの中でも特に重要な3つの手法に焦点を当てて学びます。これにより、受講者はさまざまなアプローチを通じて心のケアを行う方法を理解し、実践することができます。

これらの講座を通じて、アートセラピーの理論と実践に精通し、個々のニーズに応じた効果的なセラピーアプローチを提供する能力を身につけることができます。すでに対人支援活動をしている方には、アートの力を使ったクライエントの心のケアに役立つことを実感していただけます。

 

アートセラピー(芸術療法)とは

アートセラピーは、言葉では表現しきれない心の世界を目に見える形にする力を活用する心理療法です。アートを通じて自己表現をすることで、心身の健康を回復させるだけでなく、成長や自己理解を促すことができます。

以下にアートセラピーの特徴を詳しく説明します:

  1. アートの力
    アートは人類の最も偉大な発明と言われることがあります。なぜなら、アートは抽象的な感情や思考を具体的な形に変え、目に見えるかたちにすることができるからです。絵画、彫刻、音楽、ダンス、演劇など、さまざまなアート形式がアートセラピーに活用されます。
  1. 自己表現と解放
    アートセラピーでは、絵の具、クレヨン、粘土、羊毛などを使って自由に自己表現をします。このプロセスにより、内に秘めた感情や思考が解放され、心の整理や成長が促進されます。
  1. 五感の活性化
    アートを制作する際に手や目、脳の感覚が刺激されます。鈍った五感を活性化させ、感覚的な体験を通じて心身の健康をサポートします。

アートセラピーは、絵が上手い・下手ではなく、ありのままの自己表現が大切であり、誰にでもアクセス可能な方法です。

 

アートセラピー(芸術療法)の効果

アートセラピーは、自己表現を通じて「自分でも気付かなかった自分」に出会うことができる心理療法です。以下にアートセラピーの効果や特徴を詳しく説明します。

●感情の解放~カタルシス
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アートを通じて感情を表現することで、心の中に抑圧されていた感情が外に出て解放されます。

言葉では表現しきれない想いや気持ちがアートを通じて具体的な形になり、心の浄化(カタルシス)が促されます。

●葛藤や混乱した思考の整理

アートを制作することで、自分の心の中を視覚的に整理できます。線や色、形を使って自己の感情や思考を視覚化することで、客観的に向き合い、整理された思考が得られます。

●心のバランスをとる

現代社会では左脳(言語や論理的思考を司る)が優位になりがちです。アートは右脳を活性化させ、リラックスや創造性を促進します。右脳の活性化により、心のバランスを取ることができます。

●好奇心と意欲の回復
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アートセラピーは素材のセラピーとも言われています。筆感のあるクレヨンや羊毛、直線的な木片など、さまざまな素材に触れることで、無意識に心地よい影響を与えます。
幼少期の無邪気な心や好奇心を呼び起こし、自己回復への助けとなります。

 

アートセラピーは、誰にでもアクセス可能であり、自己理解や心の健康を促進する有効な方法です。

 

アートセラピーの一例「幸せ」「喜び」

下の絵はあるセラピーの時間に「幸せ」「喜び」を表現してもらった一例です。

みなさんもぜひオイルパステルや色えんぴつなどで描いてみてくださいね。

花火のように外へ外へと広がっていきます。その喜びを自分ひとりで味わうのではなく、周りにも広げていくかのようです。

花火のように外へ外へと広がっていきます。その喜びを自分ひとりで味わうのではなく、周りにも広げていくかのようです。

じわじわとあふれていく喜びのようです。穏やかな至福の状態にも見えます。次第にそのやわらかい広がりがまわりに伝わっていくようです。

じわじわとあふれていく喜びのようです。穏やかな至福の状態にも見えます。次第にそのやわらかい広がりがまわりに伝わっていくようです。

私は今こんなにうれしい!と自分で喜びをたっぷりと味わっているようです。中央にある目と大きな口がその喜びの大きさを表現していますね。

私は今こんなにうれしい!と自分で喜びをたっぷりと味わっているようです。中央にある目と大きな口がその喜びの大きさを表現していますね。

じわじわとあふれていく喜びのようです。穏やかな至福の状態にも見えます。次第にそのやわらかい広がりがまわりに伝わっていくようです。

じわじわとあふれていく喜びのようです。穏やかな至福の状態にも見えます。次第にそのやわらかい広がりがまわりに伝わっていくようです。

周りがどうであれ、自分の幸せや喜びをたっぷりと味わっている様子。自分が喜びにあふれてさえいれば、その存在は周りから見てもはっきり分かりますからね。

周りがどうであれ、自分の幸せや喜びをたっぷりと味わっている様子。自分が喜びにあふれてさえいれば、その存在は周りから見てもはっきり分かりますからね。

小さな花びらがちりばめられていく様子。同じモチーフの連続は、喜びの大きさを表現しています。シャボン玉のように次々に生まれてくかのようです。

小さな花びらがちりばめられていく様子。同じモチーフの連続は、喜びの大きさを表現しています。シャボン玉のように次々に生まれてくかのようです。

今回はテーマのあるものですが、テーマのないのもあります。

いずれにしてもアート表現は、目に見えないものを自分の内側から表現し、それを目で見ることができるようになります。

その作品への評価は一切ありません。視覚化されることは私たちの心の安定にたいへん役立ち、だからこそ癒しが訪れます。

大切なのは、あなた自身が描いた絵を、しっかりと見つめること。思いのままに描いたその絵に、あなたの心がどのように反映されているのか。じっくり絵と対話することが自分の理解につながり、心の平穏や自信を導いてくれるでしょう。

自分だけで解釈しきれない、もっと深く知りたい、という方は、アートセラピストとの時間を設けてもよいでしょう。アートセラピストは意図的にアート表現を使う、観る専門のトレーニングを受けています。

 

 

アートセラピー(芸術療法)の専門性について

アートセラピー(芸術療法)は、精神疾患をはじめとするさまざまな病状に応用される専門家による高度な技術として、欧米やカナダなどで広く活用されています。以下にアートセラピーの特徴と重要性を詳しく説明します。

  • 専門的な技術
    アートセラピーは、専門的な知識とスキルを持つアートセラピストによって提供される治療技法です。精神疾患や心の健康に対するアプローチとして、専門家が適切に指導し、リスクを最小限に抑えながら実施します。
  • アートの力を活用
    アートは言葉では表現しきれない感情や思考を具体的な形に変える力を持っています。アートを通じて自己表現をすることで、クライアントの内面を視覚的に探求し、心の健康を促進します。
  • リスク管理と資格
    アートセラピーは誰にでも扱えるアートであるため、専門的な学びが必要です。病状が悪化する可能性やリスクを考慮し、有資格のアートセラピストが適切にガイドします。
  • 国際的な認識と協会
    カナダ、イギリス、アメリカ、オーストラリアなどの国々では、アートセラピストを管理する協会が存在します。これらの協会はアートセラピストの資格を認定し、専門職としての仕事を提供しています。

アートセラピーは、心の健康をサポートする有効な方法であり、専門的なアプローチが重要です。

*芸術療法を日本国内で学ぶには*

 

アートセラピー(芸術療法)の資格

クエストは一般財団法人生涯学習開発財団認定の「アートワークセラピスト」のトレーニングプログラムも提供しています。この資格は、医療的な臨床現場ではなく、自己成長を目的とした一般コミュニティで活動することができるもので、幅広い年齢層に対してアートセラピーを提供する資格です。

また、JIPATTプログラムは、日本国内で学べるカナダアートセラピー協会基準の講座であり、3年間の学士課程レベルまたは修士課程レベルのトレーニングプログラムを受けてディプロマを取得すると、「クリニカル・アートセラピスト(臨床芸術療法士)」として活動できる資格を得ることができます(2023年でプログラム募集は終了しています)。

 

アートセラピー(芸術療法)の活動現場

<ご依頼をいただいた現場>
養護学校/精神作業所
自立訓練(生活訓練)/就労移行支援サービスLIVA
三鷹市西多世代交流センター
宮城県子ども総合センター

品川区中学校
流山市幼稚園
寒川東中学校
横須賀高校
武蔵野市立本宿小学校

パナソニック株式会社
NEC
日本ヒューレッドパッカード合同会社
大日本印刷株式会社 など

<自分のキャリアを活かした現場>
地域生活支援センター/発達障害児支援センター
放課後デイサービス/就労移行支援事業所
緩和ケア病棟/精神科病棟
精神科クリニック/産婦人科病院
小児科病棟/ダウン症児童サポート団体
ホスピス/DV回復自立支援団体 など

<クエストが創り出してきた現場>
高齢者施設(有料老人ホーム/デイケア/デイサービス)
幼稚園、園児、保護者、先生
小学校、児童、保護者、教師
地域児童館開催プログラム
科学館/美術館
学童保育
企業研修
アートワークカフェ

<子ども未来研究所関連>
子どものアートセラピー教室
親向けのアートセラピー教室 他

<災害支援>
2004年10月〜新潟中越地震時の小千谷幼稚園
2011年3月〜東日本大震災後の福島県広野町
2024年2月~能登半島七尾市震災後支援

<事件被害者支援>
2000年12月〜世田谷一家殺害事件

 

 

アートセラピー(芸術療法)の表現媒体

アートセラピー(芸術療法)は、さまざまな表現媒体を活用して心の健康をサポートする方法です。描画、造形、コラージュ、塑像、ペインティングなどが一般的なアートセラピーの手法ですが、詩や物語、音楽、ダンス、ドラマなども効果的に使われます。

以下にアートセラピーの特徴と効果を詳しく説明します。

【深層心理と自己表現】
アートセラピーを通じて制作された作品には、本人が気付かなかった深層心理や感情が反映されます。完成した作品を読み解いてカウンセリングに活用することで、内面にこもりがちな感情や想いを解放し、生きる勇気や楽しみを回復させます。

【自己理解と成長】
アートセラピーは「自分」という存在への理解を深める手段となります。自己表現を通じて、確たる「自分」を形づくるプロセスが促進されます。

【幅広い表現媒体】
アートセラピーでは、絵画や彫刻だけでなく、詩や音楽、ダンスなども活用されます。さまざまな表現媒体を通じて、クライアントの心の健康をサポートします。

「クエスト・アートセラピスト養成講座」「アートセラピー・ファシリテータートレーニングコース」では、心理学やカウンセリング技法を伝えながら、アートセラピーの実践を交えて学ぶことができます。

 

「アートカウンセリング」という考え方

個人カウンセリング2

アートカウンセリングは、絵や造形などのアート表現を使ったカウンセリング方法です。主に言語を主体とする対人支援活動に、非言語のアート表現を用いることで、どんな効果が期待されるのか、以下にアートカウンセリングの特徴と魅力を詳しく説明します。

1.言葉を超えた自己表現
アートカウンセリングでは、言葉だけでなく、絵や彫刻、音楽などのアートを通じて自己表現をします。言葉では表現しきれない感情や思考を具体的な形に変えることができます。

2.自己理解と成長
アートを制作することで、自分自身を知り、内面の感情や思考を視覚的に探求します自己理解を深めることで、成長や変容が促されます。

3.自由な発想と創造性
アートカウンセリングは、自由な発想と創造性を引き出す場でもあります。老若男女、あらゆる世代の人々が能動的にアートに取り組み、自己表現を楽しむことができます。

アートカウンセリングは、言葉を頼らない「アート表現」だからこそ、新しい視点や考え方を得ることができる魅力的な方法です。

  • 自然に気持ちが伝わる
  • 言葉は建前に傾きやすい。アートはそういった善悪とか、因果関係からクライアントを解放し、メタファー、比喩で伝えることができる
  • 見えない心(思いや感覚)を形に表現することで、対話が可能になる
  • 問題や悩みを変容させることができる
  • アート表現を媒介とすると、クライアントの心の過程がアートに現れるので、セラピストとクライアントとの関係が安定する。


アートカウンセリングでは、評価は一切しません。ですから、絵が苦手な方も安心して受けることができます。時には描画ではなく、粘土や写真、木片など他の画材を使う場合もあります。たった一本の線で表現した抽象画であったとしてもそこにはあなたのこころが表れています。アートセラピストは出来る限り、あなたが安心して自由に表現できる場を設けますのでご安心ください。

アートカウンセリングを行うには、アートセラピストとしての知識・テクニックが必要です。クエストではクエスト・アートセラピスト養成講座アートセラピストが提案するすぐに使えるカウンセリング技法講座で学ぶことが出来ます。

*医療機関ではありませんので、治療を目的としておりません。あらかじめご了承下さい。

 

アートセラピーの歴史

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アートセラピーの概念は20世紀の中ごろに、アメリカの精神分析家マーガレット・ナウムブルクによって生み出されたと言われています。ナウムブルクは「芸術表現」と「精神医学」がともに「心に働きかける力」を持っていることに注目し、アートが子供や精神病患者にどのように影響するのかを研究し、多数の書籍も出版しました。

彼女自身が「アートセラピー」という言葉を考案したわけではありませんが、アートセラピーの本質的なパイオニアと言えるでしょう。その後、エディス・クレーマー博士が大学院レベルの学びに発展させました。

「アートセラピー」という言葉を初めて用いたのは、ナウムブルクと同時期にイギリスで結核患者のためのサナトリウムでアートを教えていたエイドリアン・ヒルとされています。そのエイドリアン・ヒルのもとで働いていたエドワード・アダムソンが1946年にロンドンの精神病院でオープンスタジオ形式のアートセラピーを開催し、以降そのスタイルは多くの精神病院で行われることになりました。

アートセラピーの成り立ちにはそのほかにもいろいろな説がありますが、精神に働きかけることが目的の一つであったことは違いがないようです。また、「アートセラピー」という言葉自体は新しくても、芸術活動を通して心を癒していく作業が古代から世界中で行われてきたことは疑いようもありません。

ユングとアートセラピー

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19世紀の精神分析医カール・グスタフ・ユング博士は、アートセラピーの根拠となる考えを示しました。

彼は「人間の芸術表現という行為が、混乱をきたした精神の治療に役立つ」と考え、自らもアートを通じて経験しながら、「想像と創造性からなる芸術表現が、人間の精神の統合(個人の精神的成長)に重大な働きを果たすこと」を発見しました。

ユングは、アート表現が人間の精神の安定にとって重要であることを再発見した先駆者と言えるでしょう。