柴崎 嘉寿隆ブログ「自分セラピー」

第1回『ぼくと魔法の言葉たち』を観て想うこと

僕と魔法の言葉たち

アールブリュット3部作ブログ

1回『ぼくと魔法の言葉たち』を観て想うこと

株式会社トランスフォーマーさんのご厚意で、試写会にご招待いただきました。

アカデミーの長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた作品です。

 

昨年度、各国の映画賞を数々獲得した「自閉症」のオーウェンの成長記録。

あらためて、「物語の持つ力」や、「アートの力」が、

心の回復にどれほど役立つのかを感じさせてくれた作品でした。

 

映画では、家族が記録した幼い頃の家族のオーウェンの様子も表現されています。

そこには、庭で大好きなピーターパンになって、フック船長になったパパと戦う様子や、

お兄ちゃんとふざけて遊んでいるごく普通の幼児期の様子もありました。

 

それなのに、オーウェンは2歳のある日、突然言葉を失ってしまいます。

自閉症と診断され、言葉の回復はないかもしれないというドクターの言葉に、

両親はショックを受けます。

 

時折、意味の分からない言葉をつぶやいているだけで、会話は全く成立しない。

でも両親は決してあきらめようとはしませんでした。

 

一年ほどたったころ、いつものように大好きなディズニーアニメーションを

家族で観ていると、『リトルマ―メイド』のあるシーンで、オーウェンが突然何かを

つぶやきます。

はっきりしない言葉、繰り返し何度もつぶやくうちに父親はその言葉が何かに気づきます。

 

「言葉を取り戻せ!」

 

なんとそれは登場人物のセリフだったのです。

 

それ以来家族は、ディズニーアニメを通してオーウェンが言葉を取り戻していくことを

サポートしていきます。

さらに父親は、『アラジン』に登場するオウム、イアーゴのパペットで話しかけると、

まさに魔法のように言葉が返ってきたのです。

 

こうした障害を持ちながら、オーウェンが明るく、そして社会の中でたくましく

自立していく様子が、見事に描かれています。

アメリカのこういった人たちへのサポート体制も素晴らしかった。

 

印象的なシーンがたくさんあります。

 

パパが涙をこらえながら“イアーゴ”になって会話をした様子

9歳のお兄ちゃんの心の苦しみについて、オーウェンが突然語たりだした言葉。

一人暮らしを始めたときの不安と期待

失恋をしたときの母親との電話での会話

お兄ちゃんのオーウェンへの愛情と苦悩

 

さらに、オーウェンはそれぞれの試練を乗り越える時に、それにピッタリの

ディズニーアニメーションを選び、そのシーンを繰り返し観るのです。

 

オーウェンは、ディズニーアニメの物語を通してオーウェン自身を取り戻していきました。

でもこれは、障害を持つ人たちだけに限った事ではありません。

ディズニーに限らず、物語というものは、健常な私たちの苦しみも救い出します。

ナラティブセラピーという分野があるように、物語は人の心を癒し、回復させ、

心を整える力があるのです。

 

さらにオーウェンは、物語の主人公ではない、脇役たちのものがたりを自ら創り出します。

オーウェンがスケッチブックに脇役たちのキャラクターを描きます。

そのタッチの力強さと、表情の豊かなこと。

脇役たちに障害を持つ自分を投影し、脇役こそがヒーローを助けているのだと

そのキャラクター達を描き続けるのです。

 

アートにも、物語にも、人間の心を回復させていく力がある。

 

丁度3月25日には、ボクのナラティブアートセラピーのワークショップ(大阪)があります。

このタイミングで、この映画を観ることができてしあわせでした。

 

関西方面の皆さん、お楽しみに!

『僕と魔法の言葉たち』
4/8(土)シネスイッチ銀座などに
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【大阪】3/25(土)10時〜16時
柴崎嘉寿隆による1日アートセラピーワークショップ
ナラティブ・セラピー〜物語療法とアート”

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投稿者:柴崎 嘉寿隆

クエスト総合研究所代表取締役  JIPATTディレクター(Japan International Program of Art Therapy in Tokyo Director)、 NPO法人子ども未来研究所 理事長