アートを通しての豊かさ
介護福祉士
女性
源藤 達子
プロフィール
介護福祉士
内閣府所管(一財)マスターアートワークセラピスト
高齢者施設での活動について教えてください。
最近私は、アートの現場にウクレレを登場させています。
ある時ウクレレの生の音色が、耳に心地よく飛び込んできました。
その時ふと、生の音があったら、楽しいのではと思いました。
楽器や鈴など、生の音も、アートの素材になります。
それに合わせて歌をうたい、身体を揺らして、皆様の表情もいっそう穏やかに見えます。
ハワイをテーマにしたワークでは、実際にウクレレにさわって、つま弾いていただきました。
色々な弾き方をしながら、ご自分の出す音を聞く体験は、とても刺激になったようです。
参加される方々のその日の体調、気持ちは様々ですが、ワーク中、沢山の思い出話が飛び出したり、
自己紹介でご自分の名前を言う時には、車いすから思わず立ち上がる様子も見られます。
テーマによって昔ながらのけん玉や、紙風船があると、子供の頃に戻ったように、生き生きと手を動かして遊びを楽しんでいます。
こんなふうに、思わずやってみる行動っていいなと思っています。
アートワークの場面では、その方の好みや表現したいものにじっくりと寄り添います。
集中したり、眠くなったり、その方らしい時間が流れていきます。
このように、現場は一回一回、その時その時で刺激に満ちています。
それを受け取るのは高齢者の方達だけでなく場を提供している私達も皆様のエネルギーに触れて、元気になって喜びを感じる時間です。
時には職員の方やご家族も加わり共同作業になったり会話がにぎやかになったりします。
プログラムを作っていて自分の視野が狭くなっている時もありますが、チームの仲間の助言やアイデア、今までの参加者様の感想やご様子を振り返りながら気付きをもらい、また次の一歩を踏み出しています。
チームの力をもらい、
参加者様の言葉、
「君たちは尊い事をしているんだよ」
「懐かしい昔を思い出した」
「出来たものは支離滅裂」と言いながらもやりきったと笑顔で答えて下さり、やっていてよかった、仲間を増やしてまた楽しめる場を創りだしたいと思っています。
クエストの学びで役だっている事はどんな事ですか?
アートは、やってみると、どんな年齢の人でも、
どんな環境の中でも、心の中の様子が表れて気づきがあるという事です。
その見えたものを日常に生かすことができるって、なんてシンプルで深いんだろうと思いました。
具体的には気持ちがすっきりしたり、進む方向に気づくとか発散したりリラックスできたり豊かさを感じたり。
実際に自分では、アートワークの準備で素材を触って手を動かしている時、実感しています。
自分が源になってその場を創っていくことで最近特に感じているのは、高齢者の方々に何を味わってもらいたいかを明確にしたら、自分を整えて本当に楽しんでいたら、周りにも伝わるという事です。
様々な素材によってアートすると、素材がその方の「らしさ」を引き出してくれることです。
ワークの前に、試作をするのですが、すでにその段階で私自身が引き出されているのに気が付きます。
出来上がりの良い、悪い、うまい、へた、に焦点をあてず、
出来上がるまでのプロセスを味わい、大切にする事。そのことを承認すること。
途中で寝ていても、あまりアートワークをやりたくないとしても、
その方がその場におられる事、うつらうつらしていたとしても
周りの声や音が聞こえていて刺激になっている事、
お隣の方の使っている色や形に触発されて、素材を手にしてみる事、
その時間のどこかが刺激になって、活性化して何らかの豊かな影響になったのであれば、ステキだなと思っています。