アートの力で、心を見つめ、人と関わる。
“表現する力”が“支える力”になる
この講座は、ユング心理学やアートセラピー理論を背景に、心の深層に働きかける“表現”を、対人支援の現場で活かす「アートファシリテーション」を学ぶ専門講座です。
「絵が得意でなくても大丈夫ですか?」という声に、私たちはこう答えます。
「大丈夫です。あなたの中にある“創造の声”を聴くことから始めましょう。」

こんな方におすすめ
・ 対人支援に関わるお仕事をしている方(心理、教育、福祉など)
・ アートセラピーや表現の心理学に興味のある方
・ アート表現を通じて自分と向き合いたい方
・ ワークショップやグループ活動の場づくりに関心のある方
・ 支援の幅を広げたい方
アートセラピー理論とは?
心に触れ、創造を通して癒す「アートのちから」
アートセラピーは、「描く」「つくる」といった創造的な行為そのものが、心に働きかけ、癒しや気づきをもたらすという考え方に基づいた心理療法の一つです。
特に本講座で重視するのは、「心理学的な理論」と「創作のプロセス」の両方に根差した“実践的なアートセラピー理論”。その根幹をなすのが、以下の4つの視点です。

1. 心理力動的アプローチ ―ユング派を中心に
精神分析の系譜にあるこのアプローチは、私たちの内面にある「無意識」の世界を大切にします。とくにカール・G・ユングは、アート表現にあらわれる象徴やイメージを通して、人が「本来の自己(Self)」とつながる可能性を見出しました。
この講座では…
- 描いた作品に表れる象徴を、本人の気づきと重ねながら探っていきます
- 解釈ではなく“意味を見つける対話”を重視します
- 自己理解と統合(=個性化)を深めるプロセスを体験します

2. 芸術表現を介した自己探究
アートセラピーにおいて、作品の完成度や見栄えは二の次です。大切なのは「何を描いたか」ではなく、「どんな気持ちで、どう描いたのか」。
絵の中には、ことばにならない感情、過去の記憶、いま感じていることが、色や形、線の動きとなって表れます。それを“見守ること”“感じること”が、自分自身との対話を深める第一歩になります。
この講座では…
- 表現されたアートを通して、今の自分の内面を“観る”練習をします
- 作品に「答えを求める」のではなく、「問いを育てる」関わり方を学びます
- 自己探究のプロセスそのものを、他者支援にも活かせるようにします

3. ホールネス(全体性)への志向
現代を生きる私たちは、思考と感情、身体と心、日常と無意識など、多くのものを分けて考える傾向にあります。アートセラピーの視点は、こうした分断を統合し、自分の中の「全体性(ホールネス)」を回復することを大切にしています。
アートを使って「感じる」時間を持つことは、感覚と感情のバランスを取り戻すことでもあり、支援職にとっても“内なるリソース”を充実させる営みです。
この講座では…
- こころと身体のつながりを意識した表現ワークを行います
- 内的な葛藤や矛盾に対して、「統合のまなざし」を持つ力を育てます

4. セラピューティック・リレーションシップ(癒しの関係性)
アートセラピーでは、「何をするか」以上に、「どう関わるか」が重要です。支援者が評価や分析の立場になるのではなく、「その人の表現を尊重し、共に感じる」ことが、安心と信頼の土台を築きます。
このような関係性そのものが、癒しとなり、表現の力を引き出す原動力になります。
この講座では…
- 安心・安全な表現空間の作り方を学びます
- 対人援助において「治す」ではなく「寄り添う」姿勢を体験的に理解します
- ファシリテーターとして“あり方”を育むプロセスを重視します
クエスト・アートセラピーファシリテーター講座
概要・スケジュール・受講費用
カリキュラム
アートがひらく気づきの場づくり
~アートセラピー・ファシリテーターという在り方~
アートセラピーの理論と技法を学びながら、「拓かれる問いかけ(Opening Inquiry)」を通じて、自然に気づきが生まれる対話とファシリテーションの力を育てていきます。
アートを通して心の深層に触れ、自己理解を深めるプロセスとともに、支援の場に立ち会う在り方を学びます。
支援・教育・福祉・コミュニティなど、さまざまな場面で活かせる対人支援の土台を、アートという創造的な手段を通じて育んでいきます。
「人とかかわること」を大切にしているすべての方に開かれたプログラムです。
■ 前期概要
この講座では、アートセラピーの理論と実践を軸に、非言語の力を土台に場づくりや”拓かれる問いかけ”を学びます。
心理職や教育、福祉、医療の現場をはじめ、表現や人と関わる分野に関心を持つすべての方に向けて、ファシリテーターとしての視点を丁寧に育てていきます。
多様な事例や実践、素材との出会いを通じて、知識と感性の両面から学びを深めていきます。

アートセラピー/ファシリテーション概論―心と表現に寄り添う視点
アートセラピーの理論的背景や歴史、心の仕組みを踏まえた表現のとらえ方、傾聴や問いかけの基本など、ファシリテーターとしての土台を築きます。実際にアート表現を通じた“場”を体験しながら、その本質を学びます。
アートセラピーとは/心のメカニズム/絵のとらえ方/傾聴と問いかけ/セラピストの役割とファシリテーターの役割

対象者別アプローチ―多様な人と心に向き合う
多様な対象者に応じたアートセラピーの活用法を学びます。心身の発達段階や特性に合わせた手法、関係性の築き方、留意点などを通じて、柔軟で実践的なファシリテーションスキルを身につけます。
子ども(幼児期、児童期)/成人/高齢者/他

問いかけが啓く表現の力―Opening Inquiryの実践
アート表現に対する“拓かれる問いかけ”や“対話”の力を深めます。個人、グループそれぞれの場づくりの違いを理解しながら、言葉にならない思いやイメージに寄り添い、表現を拓いていく問いかけのアプローチを実践的に学びます。
拓かれる問いかけの実際/対話の重要性/画材のスペクトラム

アート表現の奥にあるもの―描画の解釈と問いかけ
アートには“言葉”以上にその人らしさが現れます。精神疾患を抱える方や被災者支援の事例を通じて、描かれた世界からその人を理解する視点を学びます。また、描画テストや連続画の持つ力と、専門的に読み解く上での倫理や距離感にも触れていきます。
精神疾患患者/災害被災者支援/事例研究/描画テストの活かし方/連続画としてのアート

癒しと創造を体感するセラピューティックアプローチ―ワークショップ
心の深い部分に触れるアート表現の力を、自らの体験を通して実感していきます。手を動かし、素材と出会い、自由に表現することで、アート表現が人に与える癒しと再生の可能性を体感的に理解します。
自由な表現/インナーチャイルド/自己表現としてのアート/遊びとアート
■ 後期概要
この講座では、ユング心理学の理論を土台に、アート表現を通じて“自己探求”を深めます。
支援者としての基盤を築くには、まず自分自身を理解することが不可欠です。
夢や象徴、無意識の世界と向き合いながら、自己を理解する教育分析のプロセスを丁寧にたどっていきます。
イメージの世界に触れ、自己との対話を深めることで、支援における“安心と安全” を育む力を内側から養っていきます。

ユング心理学概論―こころの地図を描く
ユングは、夢やアートを通して無意識を探求し、「個性化」を目指しました。ユング心理学の心理構造や元型、自我との関係性を学び、無意識とのつながりに気づくことで、自分自身の内的世界を見つめる第一歩を踏み出します。
ユング心理学の心理構造/個性化のプロセス/コンプレックスの解消

シャドウとの出会い―内なる“もう一人の自分”
人は無意識に、自分の否定したい内面を他者に投影します。「苦手な人」や「嫌いな人」の中に、自分が抑圧している「影(シャドウ)」が隠れています。投影や転移の仕組みを学びながら、アート表現や心理実習を通して、「影(シャドウ)」に光を当てていきます。
自我防衛機制/投影・転移のメカニズム/光と影の統合

内なる関係性がつくる現実―アニマ・アニムスが人生に与えるもの
誰の内にも、女性性(アニマ)と男性性(アニムス)の両側面が存在し、それらは私たちの人間関係、健康、経済などの、あらゆる「関係性」に影響を与えています。理論とアート表現を通じて、内なる関係性のバランスに気づき、自分の望む現実を創り出すプロセスを体験的に学びます。
アニマ・アニムスの発達段階/ひらめきと創造/元型論

夢と物語が示す、わたしの未来―連続画とコラージュ
夢やイメージの中には、自分の歩むべき道のヒントが隠されています。これまで描いてきた夢の絵を連続画として辿りながら、自分自身の人生パターンと未来へのヒントを見つけていきます。
連続画としてのアート/コラージュ療法/夢のとらえ方/象徴言語

ペルソナと本来のわたし―自分軸と他者軸
誰もが社会に向けたペルソナ(仮面)を着けています。外に向けた「役割」から、仮面の内側にある「本来の自分」へと意識を向け、自分軸を取り戻すプロセスを体験するワークショップです。
ペルソナ理論/選択と決断/アファメーション/修了式
アートファシリテーター認定について
■ 論文考査
前期・後期それぞれ論文提出11,000円(各5,500円)
■ 必修科目
1.アートケアトレーニング(個人セッション):3回 19,500円
2.エニアグラム(類型論ワークショップ):6,600円⇒3,300円
3.Art in Chat体験1回(代官山スタジオ):5,500円⇒4,400円
*1,2は未体験の方のみ
認定とその先へ
修了生は、希望者には「内閣府所管一般財団法人生涯学習開発財団(GLLC)認定アートセラピーファシリテーター」の申請可能。(別途申請料が必要となります。)
修了後は、さらに実践的な「クエスト・アートセラピーファシリテーター・アドバンスコース」へのステップアップも可能です。
講座概要
- 日程・構成
- 【前期】2025年10月~2026年2月:アートファシリテーションの理論と実践(全10日間)
【後期】2026年3月~7月:アートセラピーによる自己探究(全10日間)
※日程はすべて土日(詳細はこちらをご確認ください)
- 開催形式
- 対面およびオンラインのハイブリッド形式
※スクーリング(第5回・第10回)
- 受講費用
- 550,000円(消費税込み)*税前500,000円
オリジナルテキスト、画材一式、分割払い・クレジット払い可 - 早期申込特典
- 8月15日までに申し込み完了の方に特別割引
440,000円(消費税込み)*税前400,000円
※一括支払いのみ - 定員
- 20名(少人数制・事前審査あり)
本講座の講師陣
主任講師
柴崎 嘉寿隆
公認心理師
クエスト総合研究所代表取締役
*1987年より心理学講師として活動。1995年株式会社クエスト総合研究所設立後、国内のアートセラピーの普及の他、日本独自のアートセラピーをアジアや世界に広げ、国際交流もしている。親子のためのアートセラピー教室、野外活動による子どもの自立支援、被災害児童支援等の活動にあたる。
講師
大橋 牧子
アートセラピスト・心理学講師
20年にわたり、親子のアートセラピー教室を主宰。
障害者生活支援センターや放課後支援教室、就労支援施設等でもアートセラピーを提供してきた。
また、フォトアートセラピーの分野を確立し、大学や幼稚園等での活動も広げている。
吉川 恭子
臨床心理士・大学講師
高齢者施設にて高齢者の方や病院にてホスピス入院患者の方を対象に臨床の現場でアートセラピーを提供している。
成人の方を対象には個人向けカウンセリングやワークショップ、企業向け研修プログラムのファシリテーターとして活動している。
高橋 洋子
アートセラピスト・認定心理士
20年以上にもわたり高齢者向けのアートワーク提供。
就労支援施設や不登校児童また支援を必要としている女性を対象など幅広く活動を行っている。
また高齢者向けプログラムの研究のほか、介護福祉施設スタッフのメンタルケアの場やカウンセリングにも力を入れている。

井川 幸子
対人支援ファシリテーター
保育園、障がい者施設勤務経験、障害児の子育てを通じて培った経験を活かし、『自分らしく生きるための、自分のための表現の場』を提供している。
子ども、親子を対象としたアートセラピー教室、定期的なイベントを主宰。その他、障がい者施設での成人を対象としたアートセラピーなど幅広く活動。
受講生の声・よくいただくご質問
受講生の声
- 30代
教育関係 - “答えを出す”のではなく、“その人の気づきを支える”という姿勢が、心に残りました。
- 40代
カウンセラー - アートを通して、自分でも気づいていなかった感情と出会えました。支援者としての“在り方”を見直す機会になりました。
よくいただくご質問
Q. 絵が苦手でも大丈夫ですか?
はい、大丈夫です。作品の上手・下手は問いません。むしろ“苦手”という感覚にこそ、自己理解への入口があります。
Q. 心理の資格がなくても受講できますか?
はい、どんな方でも受講できます。これから心のケアをしていきたいと思っている方も、既に支援職についている方に役立つスキルを学べます。
Q. 遠方からの参加は可能ですか?
対面、オンライン参加のどちらかをお選びいただきます。ただし、スクーリング(第5回・第10回)があります。
Q. 欠席した場合はどうなりますか?
リアルタイム受講が基本ですが、やむを得ない事情の場合は、アーカイブ受講が可能です。ご相談ください。
Q. ボランティアなどの体験場所はありますか?
はい、希望者には、クエストが携わっている様々な活動場所や、NPO子ども未来研究所の教室でのサポート、また災害支援ボランティアなどの機会があります。
本講座に伴うお問合せ・お申し込みについて
本講座について、ご不明点がございましたらお気軽にお問い合わせください。
オンラインにて実施している、「アートセラピーNAVI」では、対面・オンラインにて詳細をご説明することも可能です。