「芸術療法(アート・セラピー)において作られるイメージは、考えや感情を具体化する。内的世界と外的現実との間を橋渡しするというのが、芸術のもつ力なのである。そこではイメージが媒介者としての役割を果たすことになる。イメージは無意識と意識の間を媒介し、クライエントの過去や現在、未来の様相を包括したり(holing)、象徴化したりする。1枚の絵のなかに、アンビヴァレンスや葛藤が表現され包含される(contained)。芸術療法のなかで、クライエントは作るという過程をとおして、表現できなかったり言葉では言い表せないと思われていることに形を与えようと試みるのである。」
出典)「芸術療法ハンドブック」 C・ケイス/T・ダリ―著 岡昌之監修訳 誠信書房
「ただいま」
そう言って玄関を開け鞄を床に置く。
その瞬間に「ふぅ」と肩から力がぬけていく。
別段何か大きなトラブルや不安を抱えているわけでもないだが、その「ふぅ」という言葉とともに騒がしく向けられていた外への意識が遮断される。
アートセラピーの時間
丸めたりこねたり伸ばしたりつぶしたり。手のひらにすっぽり入る分量の粘土を握りながらゆっくりと自分の内側に意識が向けられ静かになっていく。
そうして自分の形や配置と出会う。
代り映えのしない自分だなとつくづく思う。
そう代り映えのしない自分。
だけどこの代り映えのしない自分と出会った静かな感覚を言葉にするとしたならばただ一言こうである。
「おかえり」
そうだよね。
わたしはわたしであり、
わたしでいいんだよね。。(Staff Y)