「じゃぁ。鉛筆を置いてください。途中でも構いません」「はい、顔をあげて。ではこれから、なぜこれを行なったのかを説明します。先ほど僕は、黒板に『一本線をひく』と書きました。
でも僕はそれ以外何も言っていません。だから、こんなふうに斜めにひいても、ぐにゃぐにゃにしても、みんな一本の線なんです。
でも君たちは迷いました。 それは悪いことじゃないんだよ。 君たちは、今まで、一本線をひくとはこういうことですよ。と学習してきたんだ。それは、誰もが、一本線をひくことはこうですよ、と覚えていることで、物事がスムーズに運んでいくこともあるのです。だから一本横に線をひいたことは、まちがいじゃないんだ。でも僕は、一言もまっすぐとか、縦にとか、横にとは言わなかったよね。これって何だろうね?」
出典)教育と医学 2011 美術の授業・感じる心と考える心 瓦田 勝 慶応義塾大学出版会
瓦田先生の中学2年生向けの授業の一コマです。クロッキーブックと鉛筆を用意し、
ただ一言『一本線をひく』この言葉から授業がはじまります。
少し間をおいてクラスの中はざわつきはじめ質問があがる。
「まっすぐですか?」「定規はつかっていいか?」etc・・・
しばらくして先生はこう伝えます
「自分が思ったとおりでいいんだよ。」
あなたがもしこの文章を読まずにただ一言「一本線をひく」
そう伝えられたら何を感じ、何を思い、どうしそうですか?
アートを学ぶ、アートを体験することは、
自分で考えて創り出す力を養うことでもあります。
それは生きる力を養うこと
そのもののようにわたしは思うのです。
答えはいつだって自分の中にあるのだから。
(Staff Y)