【アートセラピーコラム Vol.37】
“人生にはときどき、迷子になってしまう時期があります。さっきまで普通にいきてきたはずなのに、突如落とし穴にハマってしまう。たとえば、仕事で大失敗したり、パートナーから別れを切り出されたり、家族に問題が生じたりすると日常はいとも簡単に砕け散ります。そんな大事件でなくとも、些細な事がきっかけのきっかけのときだってあります。小さな失敗から自信を失い、微妙なすれ違いから他人を信頼できなくなる。そういうことが積み重なると、ありふれた日常は失われ、未来の見通しが消えてしまう。自分が今どこにいて、どこに向かえばいいのかわからなくなる。”
(出典:「なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない」東畑開人 新潮社)
多かれ少なかれこんな経験どなたにもあるのではないでしょうか。
こんな状態のことをユング心理学では「夜の航海と呼びます。未来の展望が見えずに迷子になってしまう人生の方向喪失時期。焦って漕いでもグルグルグルグル。
そんな時のアートは面白いものでなんだかぐちゃぐちゃ。東西南北も天地も何もかもがずれまくってしまったりなんていう表現をする方もいます。
そりゃそうですよね。冷静でなんかいられない。
何かを見つけたいと焦っているけれど、そう簡単に夜の大海原の航海は終わらない。
だけれどもいえるのはアートのひと時は、ひとまずそんな自分を隠さずにいられる場所なのかもしれない。たった一人の孤独や寂しさ、不安や怒り、恐怖なにもかもを受け止めてくれる画用紙には言葉にならない思いがいろんな素材で表現される。
アートセラピーを学んだセラピストが傍らで見守っている場であればなお安心な場といえるでしょう。
えええーーーいっ!声を出したって構やしない。
それだって私たちの大事な大事な表現なのですから。
それだって私たちの大事な大事な表現なのですから。
さてこの「夜の航海」
こんな時間、実はそうそうない。
ゴージャスな旅だと思ってみるのもいいかもしれない。
変な話お手上げ。だってこんな海で一人どうすりゃいいのよ状態ですからね。
Wifi飛んでなさそうだし。
ひと息つい空を見上げる。
星空の中でたった一つ自分にだけ輝いているような星があるかもしれない。
また目を凝らしてみるとと小船のわき、真っ暗な海の中で寄り添う魚がいるかもしれない。
ひとりだけど、ひとりじゃないと感じられること。
それは自分と繋がっている。繋がり始めている状態かもしれません。
焦らずにこのほっぽり出された状態をまず受け止めてみる。
そうすることで見てくるものがある。
この受け止めていくと思った時から見えない心の磁石は針を差し始めているのだと思います。
Staff.Y