2023/8/1 Vol.38 時間と物語

 自伝的記憶(Neisser,U.&Fivush,R., 1994:Rubin,D.C., 1996;佐藤、1998)や、偽りの記憶(Conway,M.A.,1997)研究が明確にしてきたように、「過去」は記憶庫に固形物のように蓄積され、想起は「過去」をそのままの形で引き出すというわけではありません。時間的に後から来るものによって、「過去」は「現在」と照合されてたえず再編成され、読みかえられて変容していきます。
 したがって、「過去」は固定されたものではなく、「現在」の中にあります。時の流れに過去も現在もありませんが、もし人為的に区切るならば、アウグスチヌスが言うように、「過去」「現在」「未来」という3つの時ではなく、「過去の現在」「現在の現在」「未来の現在」と名付けるべきかもしれません。

(出典:「人生を物語るー生成のライフストーリー」やまだようこ編著 ミネルヴァ書房)

過去を思い出すのは、間違いなく「いまのわたし」です。
うれしい過去 切ない過去 忘れたい過去 忘れていた過去
どの「過去」もあの瞬間の「今」であり、
その「今」が積み重ねられ「過去」となり「今」となる。

その「過去」を取り出す「いまのわたし」の状態によって
過去は形も色も温度も変わってしまう。

もしかすると過去とはそれくらい「みずみずしいもの」のなのかもしれない。
そして過去とは主体性を持たず、いつだって「いまのわたし」に
必要に応じてあわせてくれるものなのかもしれない。

と、何の裏付けもなく自分勝手に捉えなおすことをするものもまた「いまのわたし」

 

ー「過去」は固定されたものではなく、「現在」の中にあります。ー

 

つまりは大事なのはいつだって「いまのわたし」しかない
たくさんの過去を積み重ね味わってきた「いまのわたし」の心に寄り添うこと

それ以外にできることはない

アートセラピーもカウンセリングも
いまのわたしにアクセスをする

スケッチブックにクレヨン
塗って塗って塗って
どうしようもなく湧き上がるものをスケッチブックに託す
手指がもうとんでもない色になる
塗って塗って描いて描いて描いて

描いたものを眺めながら
言葉をしたためてもいい
いえない言葉を書いたっていい

(泣きたかったんだね)

アートの時間だけは自分に正直でいていいよ。

Staff.Y