コトノハです。ご贔屓に。
落ち葉や栗の実、椎の実、どんぐり、そしてすすき
この日は『秋』がシニアのみなさんのところに一足早く訪れました。
Yさんはこの色とりどりの中から見つけたものがありました。
Yさんは、葉っぱにすすきをさしました。
そしてその葉っぱを刺したすすきを両手で持ち
少しゆらしているような仕草
「あの人はもう認知症が進んでいるのよ。わからないわよ。」
そう女性のお仲間が私に教えてくれました。
「まぁ。。そうでしたか。。独特な作品ですよね。」と私。
** ** **
「Yさん そのブラウスとってもお似合いですね。素敵です!」
「まぁ!ありがとう」
「Yさんの手 あたたかくてずっと握っていたいです」
「ありがとう。私もあなたの手を握っていたわ。」
ありがとう。といつも言葉を添えるYさんは認知症です。
1Fで会っておしゃべりしても、数分後別なフロアでお会いした時には
もう私を覚えてはいません・・・。
職員の方からも、少し注意深く見守ってくださいという指示があります。
出会ってからもう6年近く。その変化に私たちも気づいています。
今日のワークは、自然素材を使って、秋を感じて表現する。
台紙に紅葉を並べる方、どんぐりや松ぼっくりといった木の実を並べる方、
選ぶものも、並べ方も人それぞれ。
見本はありません。
Yさんが大事そうに手にしていたのは、すすき。
それもちょうど空いていた葉っぱの穴にすすきの茎を通していました。
私は少し離れた所からYさんを眺めていたらふと感じた事がありました。
(お話をしている・・・・。)
手にしているすすきには命が宿っていて、ゆらゆらと揺らしながら
Yさんは心のなかですすきとお話をしているように見えたのです。
声を発しているわけではありません。ただそのすすきをあやしているかのよう。。
その様子を見ていた私は、とても心の深いところであたたかさと安心感を
感じました。そう、Yさんに直接触れているわけではないのに、Yさんの持つ
あたたかさに触れているかのような気持ちになったのです。
そう感じていることをお伝えしました。
Yさんはまあるい目を細めて、私の言葉をじっくりと聞いてくださいました。
私が話終えると、
「そうなの、話をしているの。あなたわかるの?
ここ(すすき)には見えないけれど命があるのよ。
そう。あるのよ。だからね、話をしているよ。
うれしいわ。わかってくれてとってもうれしい。
わかってくれてありがとう。」
そう言いながら、まあるい目に薄っすらと涙を浮かべて
私の手を何度何度も握りました。
** ** **
Yさんのしている事はとてもおかしなことかもしれません。
他の方は、紙の上に落ち葉を並べて貼っているのに
Yさんはすすきに葉っぱさしているのですから。。
他の方は、自分の思い出を話しているのに、
ひとつつも見えないすすきに命があるなんてこと!
「目には見えないもの」という存在。
アートは心の表現ですが、その「心」こそ
どこにあるのかも、どんな様子なのかも見えるものではありません。
今、心が感じていることや心で見えているものを、
アート表現という色や形、さまざまな素材を通して、
本人、そして周りの人にわかるように、気づいてと。。
それが少し異なる表現だとしても。。。
見えないものを否定するのではなくて、
その事を一緒に味わってみる。感じてみる。
いえ、「みようとする」だけでも十分かもしれません。
だって、それだけで
その人の世界を大事に受け止めて、
大切に関わろうとしている心の姿勢なのですから。
「あの人はもう認知症が進んでいるのよ。わからないわよ。」
はい。そうかもしれません。
ですが、もしかすると、
「わかること」の世界がただ違ってきているだけかもしれません。
わからないのは・・・・
私たち健常と呼ばれる側なのかもしれないと
違う立場で考える事も 大切な事かもしれません。。
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●11/19(土)10:30~