私がファンタジーを読み始めたのは、この仕事を始めてから。
それまでは、魔法とか、時空間移動とか、 「 現実的ではない 」 ものにはあんまり興味がありませんでした。
でもクエストを始める前に、河合隼雄先生の著作に紹介されていたファンタジー文学をきっかけに読みだして、もうかれこれ30年。
ファンタジーの傑作として、河合隼雄氏が必ず言及するのが、
トールキンの『 指輪物語 』
ルイスの『 ナルニア国物語 』
そして、ル・グィンの『 ゲド戦記 』
どれもこれも、夢中になって読みました。
そして今でも何度も読み返しています。
カール・G・ユングは、ファンタジーだけでなく、民話やおとぎばなし、そして神話や夢も、全人類共通の普遍的無意識の表象ととらえ、見えない「 心 」を探求し研究し続けました。
無意識領域に踏み込むのではなく、現実世界の中での自己実現を目指したアドラーとは違い、心の奥深くに本来の自己を探そうとしたユングにとって、普遍性はとても重要な自分探しのツールだったのかもしれません。
ファンタジーは「 現実的ではない 」と私は思っていたのだけれど、この現実世界の方が、よほど不思議で恐ろしいことが毎日起きています。
ファンタジーとは何か?については以前にも書いた事があるので、また改めるとして、今日は最近読んだ、久々の骨太ファンタジーの紹介です。
『 エメラルド アトラス 最後の魔術書 』 ジョン・スティーブンス
ケイトが4歳の時のクリスマスイヴに、両親が失踪してしまう。
「弟のマイケルと、妹のエマを守ること」と言いおいていなくなってしまうのです。
その後、孤児院を転々とし、それもひどい孤児院ばかり。
そして10年後に転院させられた孤児院は、地図にはない不思議な場所にある不気味な場所でした。
たどり着いた孤児院でケイト、マイケル、エマの3人の姉弟妹は、実は自分たちが数千年前に記された魔術書で、あることを予言された子どもたちだという事を知るのです。
大昔の世の中は、人間も魔法を使う者たちも共存して暮らしていました。
しかしながら、人間たちの魔法への怖れや無理解から、ある日を境に、別々の世界に住むことになるのです。
そして、魔法を使う者たちは、人間たちの地図の上から消え姿を隠します。
その時に記されたのが、3冊の魔術書。
その魔術書を奪って世界を支配しようとする闇の者たちと、隠された最後の魔術書3冊を探し世界を救い出す使命を持った予言された子供たちとの物語なのです。
魔法を扱うハイ・ファンタジーであり、同時に時空間を移動するタイム・ファンタジーでもある。
ナルニアも、ゲドも、ハリーポッターもそうであったように、主人公は子どもたち。
この作品は全3巻。
つまり、1巻でひとつの魔術書を取り戻していく展開で、どの巻もハラハラドキドキの連続。
ファンタジーを読むことは、目の前の現実から逃避することではありません。
それどころか、どうすることもできない目の前の現実に向きあい、自分の内側に起きている混とんとしたものを整理するために役立つ「 イメージの力 」 を養ってくれるのです。
この「 イメージ(想像)する力 」 は、そのまま「 創造する力 」 につながっていきます。
私たちの未来は、ただやってくるのではなく、今この瞬間の自分が未来を創り出しいていくのですから。